ジェンダー 自己肯定

ジェンダーや自己肯定がテーマの書籍紹介 – 岩波ジュニア新書のおすすめ3冊 –

本日は、ジェンダーや自己肯定について勉強する人におすすめの書籍をご紹介します。特に最近、ジェンダーや自己肯定に関する書籍がたくさん出てきており、素敵な本がたくさんあります。それらのおすすめ書籍の中から、本日紹介するのは、岩波ジュニア新書さんの書籍です。岩波ジュニア新書さんは、言葉の通り、岩波書店さんの中でもジュニア向けの書籍ラインなのですが、個人的には大人が読んでもとても面白いし、ためになるし、トピックも面白く、教科書では教えてくれないけどとっても大切なことがたくさん学べる話題が詰まっている書籍が多いのです!そして、何より学生でも手に取りやすい価格なので、非常におすすめです。ということで、本日はそんな岩波ジュニア新書の書籍から、このブログでも取り扱うジェンダーや自己肯定に関する書籍を厳選して3つを紹介します。

おすすめ書籍その1:男子が10代のうちに考えておきたいこと

こちらの本は、以前この記事、フェミニズムで誰が得をするの? – フェミニズムやジェンダーについて考えるのは女性の役目?でも取り上げました。社会学者、男性学の研究者である田中俊之さんの著書です。タイトルの通り、10代の男子向けに「これからどう生きていこう」「ぼくはどんな大人になっていこう」そう悩む人に書かれたものですが、10代でも男性でもない私が読んでも非常に勉強になりましたし、共感することだらけでした。こういう本に10代で出会える人はそれから先、より充実した人生が送れるだろうな、とも思いました。では私がこの本を読んで考えさせられたことをいくつかのポイントに分けてご紹介します。

進学校⇒一流企業⇒大黒柱が男性の幸せか

学生ならほとんどの人が、勉強をすることに多くの時間を費やし、勉強ができる、できないで評価されます。そして同じように家族や社会からも勉強をすることを求められ、勉強ができると褒められますよね。それはどうしてか?それは勉強ができると一流の大学に入れて、一流の大学に入るということは一流企業に入ることができて、より安定してお金を稼ぐことができる可能性が高まるからです。そしてその先期待されることは、結婚して自分の稼ぎで家族を支える大黒柱になることです。じゃあこれが一体、すべての人の幸せなのでしょうか?もちろんそんなことはないですよね。この本を読むと、進学校⇒一流企業⇒大黒柱の流れは女性より男性に期待されることが多いという現実がある日本の状況の中で、家族や社会の期待やプレッシャーに負けずに自分の幸せを追求する力が身につくと思います。

ジェンダーを切り口に、社会の常識を疑う力

本書では様々な視点で、ジェンダーに関する当たり前や無意識を考えるきっかけを与えてくれます。企業の役員や政治家など社会的地位を持つ「偉い人」は男性ばかりだということや、家族や友人の言動の中で「当たり前」と思っていたもの、本当にそうなのか?と思えるようになることなど。例えば「男の子は強くいるべき、泣いてはいけない」という言葉を小さい頃から聞いてきた人にとっては、そんなことない、弱音は吐いてもいいし、泣いてもいいんだ、家族や周りが言うことって必ずしも正しくないんだ、と書籍で論理的に学ぶことができることは非常に意味のあることだと思います。また、本書は多様な考える種を提供しており、ジェンダーや多様な性に関すること、社会通念や校則など、当たり前に疑問を持つことにより、自律的に考え、自分にとって本当に幸せな道は何かを判断するのにとても参考になる書籍です。

「男らしくあれ」という見えない圧力に窮屈な思いをしていないだろうか.進路や将来の選択に「自分らしさ」がどれだけ反映されているだろうか.性別によって求められる役割や期待のされ方が違うことに気が付かぬまま大人になる若者が多い日本で,男性学の視点から進路・生き方をとらえなおすとともに,新しい生き方を提言する.

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おすすめ書籍その2:人は見た目!と言うけれど

こちらの書籍は「見た目問題」について活動をするNPO法人マイフェイス・マイスタイルの代表である外川浩子さんの著書です。あまり聞き慣れない「見た目問題」とは、顔や体に生まれつきアザがあったり、事故や病気によるキズ、ヤケド、脱毛など「見た目(外見)」の症状がある人たちが、「見た目」を理由とする差別や偏見のせいでぶつかってしまう問題、と定義されています。見た目至上主義(ルッキズム)の文脈では、美しさやイケメンかどうか、痩せているか太っているか、の文脈で語られることが多いですが、見た目問題はルッキズムの別の視点かつ非常に重要な視点であると言えます。こちらの書籍も、見た目を気にし始めた十代や見た目に過剰になる十代のみなさんには是非読んで欲しい本です。ポイントをいくつか紹介します。

「見た目問題」の当事者とそれを取り巻く人たちの実体験

本書は様々な「見た目問題」の当事者と、その当事者の身近な人たちの体験談や思いをたくさん紹介しています。円形脱毛症やアルビノなど、その症状によって体験も一つ一つが違っていて、それぞれから学ぶことがあります。素敵な点は、当事者とその家族や友人、という関係性だけでなく、当事者と医者やいじめてしまった人の話も取り上げられている点です。過去に間違えてしまったことを認め、その時の心情や現在の気持ちを知ることで、ある意味「見た目問題」を身近に感じることができると思います。

「私、気にしてないから」の罪

本書の初めに筆者から投げかけられる問いは「私は気にしていません」を見た目問題の当事者が聞いてがっかりするのはなぜでしょう?というもの。これにはもしかしたらハッとする人も多いのではないでしょうか。本書ではそれに対する明確な回答は提供されません。本書を読んで一人ひとりに考えて欲しい、という筆者の意図ですね。私が本書を読んで考えた答えは、「私は気にしていないよ」という言葉は、その人の当事者としての今までの苦しみや、実在する差別を無視している発言だから、というものです。見た目に症状がある人が苦しんでいるのは、当事者のせいではなく、その症状がある人に対して偏見を持ったり差別をする社会の方なのです。気にしていない=無関心とも取れます。無関心であることは差別に加担していることと同義でもあるなと考えました。

この「私は気にしてないよ」とか、「私には当事者の友人がいるからアライ(味方)だよ」という言葉は、見た目問題だけでなく、LGBTなどの文脈でも最近よく聞きます。しかし当事者にとって本当に意味でのアライであることとは、その人の「気にしていない」とか「偏見は持っていない」という「考え」ではなく、その人が差別や不公平を目にした時、「行動ができるかどうか」がアライかどうかの分かれ道なんじゃないかな、と思います。

もし自分の顔に、目立つあざや傷あとがあったら…? そうした症状をもつ人たちが直面する、いじめや差別などの困難――見た目問題。当事者と共に悩み、失敗をくり返しながら解決に取り組んできた著者が、脱毛症、口唇口蓋裂、アルビノなど様々な症状の人たちの体験を伝え、家族や先生など周りの人はどう関係を築けばよいのかを考える。

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おすすめ書籍その3:女の子はどう生きるか

こちらは日本の近代フェミニズム運動の第一人者である上野千鶴子さんの書籍で、10代の女子に向けた書籍です。著者が高校生に向けた講演会を行った際に、実際に女子高生から寄せられた質問をもとに、本書は作成されたそうです。この書籍も、10代でなくても女子でなくても、読む価値があります。いくつか私が感じたポイントを以下にまとめます。

タイトルからして秀逸

この書籍のタイトル「女の子はどう生きるか」ですが、近年ベストセラーで話題になった「君たちはどう生きるか」を彷彿とさせる、というか「君」を「女の子」に言い換えています。この言い換えの意図はこちらで語られている通り、「君たちはどう生きるか」の主人公は男の子で、その彼を導く叔父さんも男性です。内容としては自分で考える力にフォーカスされた素晴らしい内容なのですが、そこにはワタシがいません。この書籍によって女の子を導きたいという著者の意図が強く現れた秀逸なタイトルだな、と思います。

学校・家庭・恋愛・社会での素朴な疑問に答えくれる

この書籍では学校・家庭・恋愛・社会の大きなチャプターに分けて、それぞれで女子高生から実際に寄せられた質問をもとに著者が回答しています。例えば「理系研究者は男子が目指すもの?!」「女の子って損?!」「リア充=恋愛?」「大臣も議員も少なくないですか?」「フェミニストってどんな人?」というものから、「専業主婦に憧れます!」というものまで。実際に女子高生からされたリアルな質問をベースに構成されているので、普段あまりジェンダーやフェミニズムを考えることのない人にとっても非常にとっつきやすい内容になっています。

「生徒会長はなぜ男子が多いの?」「女の子が黒いランドセルってダメ?」「理系に進みたいのに親がダメっていう」等々。女の子たちが日常的に抱くモヤモヤや疑問に上野先生が全力で答えます。社会に潜む差別や刷りこまれた価値観を洗い出し、一人一人が自分らしい選択をする力、知恵や感性を磨くための1冊。

岩波書店公式ホームページから

いかがでしたか?本日紹介した3冊以外にも、岩波ジュニア新書さんの書籍には、素敵な本がたくさんあります。例えば、発達障害: 思春期からのライフスキル 障害者とともに働く レギュラーになれないきみへ 「空気」を読んでも従わない: 生き苦しさからラクになる 、など、面白そうなタイトルが多いですよね?思春期の学生向けにかかれている書籍かもしれませんが、意外と学生向けに簡単に、分かりやすく書くほうが難しかったりするんですよね。だからこそ、様々な課題への入門書として、大人にもぴったりの書籍が多いのかなと思います。最後まで読んでいただいた方は、読んでみたい1冊、見つかりましたか?

参考文献

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