ジェンダー フェミニズム

フェミニズムで誰が得をするの? – フェミニズムやジェンダーについて考えるのは女性の役目?

みなさんこんにちは。今日は、フェミニズムについて、その定義から、誰のための学問で、誰が学ぶべきなのかについて、みていこうと思います。

そもそもフェミニズムとは?

フェミニズムがどんな学問かどんな思想か、というのは実は人によって違います。なんなら、辞書的な定義も国や辞書によって違うのです。ではまず英語のブリタニカ辞書の定義から見ていくと、以下のようになります。

Feminism: The belief in social, economic, and political equality of the sexes.

全ての性の社会的、経済的、政治的な平等の理論。

ブリタニカの定義

一方で、日本で広く使われている広辞苑での定義は、以下のようになります。

フェミニズム:女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動。女性解放思想。女権拡張論。

広辞苑の定義

国が変わるとフェミニズムの認識が変わるのは、面白いですね。アメリカの定義は、あくまでも全ての性別(男女とは言っていませんよね)の平等の思想なのに対して、日本では、男性支配を批判し、女性がひっくりかえす、みたいなニュアンスが見て取れます。(この定義が広まれば、フェミニズムに反発する人が出てくるのも、想像しやすいですよね。。)

この通り、辞書ですら意味やニュアンスが違うのです。そして日本では、フェミニズムを広辞苑的な定義だと思っている人も一定数いて、それが少しとっつきにくかったり、女性が男性を支配しようとしている、とか、反対運動とかに繋がってしまっているのかもしれません。それに残念ながらフェミニズムやフェミニスト=過激、誰かを攻撃するようなイメージを持っている人もおり、激しく反対する人もいます。しかし、日本でフェミニズムを学ぶ人や活動をしている人のほとんどが(少なくとも私の周りは)、日本の広辞苑の定義よりもブリタニカの定義に近い考えを持っているのではないかと思います。このブログでも、フェミニズムの定義は、「全ての性のための、社会的、経済的、政治的 平等を目指す思想や運動」と認識しています。この定義のところから、誤解が始まっているのかもしれませんね。

ジェンダーという言葉は最近聞くようになってきましたが、学問として学習するのは大学になってからで、かつ希望者のみです。そしてジェンダー論の授業を受講するのは女性が圧倒的に多いです。ジェンダーという言葉自体には女性のため、という意味は全くありませんが、ジェンダーについて学ぶのは女性だ、というイメージを持っている人が多いです。そしてここにも、ジェンダーという女性の学問を学ぶ男性はカッコ悪い、という『らしさ』の悪影響も見え隠れしていますね。

アライ ( Ally = 支援者 ) の重要性

でも、本当にジェンダーやフェミニズムは女性だけのためのものでしょうか?答えはもちろんNoです。社会的マイノリティー(人数ではなく、権力のバランスとしてのマイノリティー)の権利や支援を考え、全ての人の平等に近づけるには、マジョリティー側の気づきと行動が欠かせません(特に多数の意見が重視される民主主義では)。マイノリティとなっている人たちのための例えば制度や法律を作るのは主にマジョリティ側の人たちです。これはジェンダーだけではなく、様々な人権の話をする時にも同じですよね。例えば、LGBTQ+ の権利を訴える時に アライ の存在が重要なのと同じです。

しかし、ジェンダーの話で言うと、女性も男性と同じように、社会の中で活躍できるように、という理由だけで男性が女性のアライになるのなら、それは慈善活動ですよね。もちろん、素晴らしい心の持ち主なら、その動機だけで動けるのでしょうが、ほとんどの人はそうではありません。じゃあなんで私がこれほど、フェミニズムは全ての人のためだし、ジェンダーは全員が学ぶべき!と思っているかというと、フェミニズムやジェンダーについて学ぶことは、女性だけでなく、男性、それ以外の性で生きる人も生きやすくするからです。女性以外の性にも学ぶメリットがあるのです。

フェミニズムで楽になるのは女性も男性も一緒

フェミニズムは、全ての性がどんな場面でも自分らしく、平等に生きるためのものです。ということは、女性らしさや女性としての役割から解放されるだけではなく、男性らしさや男性としての役割を強要されなくなることも支持しています。社会の中に存在する(した)、らしさとは例えば以下のようなものがあります。

女性に対するもの

  • 女は勉強しなくていい
  • 女は投票しなくていい
  • 妻は寿退社し家事や子育てすべき
  • 女性は脱毛すべき
  • 女性は控えめであるべき
  • 女性は細かい気遣いができるべき
  • 女性は料理ができるべき

男性に対するもの(有害な男らしさ=トキシック・マスキュリにティとも言いますね)

  • 男は泣くな・弱音を吐くな
  • 常に男らしくしろ
  • 夫は大黒柱になれ
  • 男は感情を見せるな
  • 男性は女性をリードしろ
  • 男性はデートでお金を払うべき
  • 男性は短髪にすべき

中には、女性は投票しなくてもいい、というものなど、既に過去のものもありますが、ほとんどが今もなんとなく、社内の中に漂っている雰囲気ありますよね。フェミニズムが女性らしさからの開放を訴えるのは分かるかと思いますが、女性が女性らしさから解放されることは、同時に男性が不要な男性らしさから解放されることも意味しているのです。男性らしさと女性らしさはたいてい、対の関係にあります。女性は寿退社して家に入るべきで、その代わり男性が外で稼いで大黒柱になる、というような形です。女性も男性と同じように働くようになり、経済力を手に入れたなら、男性は今までの大黒柱にならないといけない、という呪いから逃れることができるのです。

自殺率から見る、男らしさという呪い

日本ではだいぶ前から社会問題となっている自殺。年間で約2万人もの人が自ら命を断っています。ものすごい数です。その自殺の男女比ですが、68.6%が男性です。7割近くが男性なのですね。

自殺の原因を見ていくと、『健康問題』『経済・生活問題』『家庭問題』『勤務問題』です。一位の健康問題の中で一番多いのはうつ病です。この全ての項目において、女性より男性に自殺率が多いです。健康問題に分類されているうつ病、原因は様々ですが、主に日常生活のストレスが原因です。まとめると、自殺の原因は『ストレスが原因のうつ病』、『貧困、お金がないこと』『会社でのトラブルやストレス』です。言い換えると、日常的に強くいろ、弱さを見せるな、大黒柱でいろ、家族のために働け、と言われている男性は、悩みがあっても周りに相談できず、お金を稼ぐこと以外で自分の価値を見出すことが難しく、それがなくなってしまうと、誰にも相談できないまま、自分の命を断つ選択をしてしまう、ということが言えるのです。男性と女性の自殺数の違いは、男性らしさの強要が引き起こしていると言っても過言ではありません。

これらのことから、男性らしさの強要は、女性らしさの強要と同じくらい凶悪で、その強要がなくなることは全ての性の人にとってメリットが有るのです。そしてその不要な『らしさ』を学ぶのがジェンダーで、そこからの開放を目指すのがフェミニズムなのです。よって、ジェンダーは義務教育に入れるべき人生の必須科目で、フェミニズムはもっと日本社会の中で会話されるべき思想と言えます。

(※2021年4月14日追記)男性の生きづらさについて、以下の動画が分かりやすく説明されているのでおすすめです。

最後に

私は『らしさ』にはまった特徴を持つことは悪いことだとは全く思いません。ただ『らしさ』にはまっている人がより評価され、はまらない人が辛い思いをすることをなくしたい、そう思っています。決して泣かない、強くて、お金をたくさんかせぐ女性も、細やかな気遣いができて料理が得意で美容が好きな男性も、強くてお金をたくさん稼いでいる男性と、細やかな気遣いができて料理が得意で美容好きな女性と同じように、社会からも肯定され、自分のことも肯定できる、そんな世界になればいいと思っています。

本日紹介したような、不要な男性らしさからの開放を目指す学問として『男性学』があります。(一部の男性学は家父長制の維持を目的としていますが、私が意図しているのはフェミニズムと基本的に同じ方向性の男性学です)男性学のほうがとっつきやすいな〜という方は、以下の本がおすすめです。10代のための、とありますが、何歳が読んでも目からうろこです。なんなら、女性で10代でもない私が読んでも非常にためになりました。この本はほんとにおすすめなので、別の記事でも紹介できればと思っています。

男子が10代のうちに考えておきたいこと (岩波ジュニア新書)

いかがでしたでしょうか?是非感想やご意見、コメントなどでいただけたら嬉しいです。シェアも大歓迎です!それではみなさん次の記事でお会いしましょう。

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