ジェンダーを考える時に知っておきたい言葉の定義について
ジェンダーは、小学校や中学校など、義務教育で学ぶものではありません。大学になっても必須科目であることはあまりないので、ジェンダーと社会の関わりについて、学ぶことなく社会に出ている人はたくさんいます。
そこでまずはジェンダーの定義を、よく比較される性と一緒に見ていきましょう。
ジェンダー(Gender):ジェンダーとは、男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係を意味します。こういった社会的属性や機会、関係性は社会的に構築され、社会化される過程(socialization process)において学習されるものです。これらは時代や背景に特有であり、変化しうるものです。
UN Women より引用
性(Sex):ある個人(individual)が女性、男性、あるいはそのどちらにも属さない性(インターセックス)であるかを規定する生物学的な特徴の総称です。
UN Women より引用
いかがでしょうか?なんか小難しいなと思う定義ですね。できるだけ簡単にすると、
- 性は生物学的な特徴を言うもので、生まれたときに割り当てられた性のこと
- ジェンダーは、社会が作り出した性別のイメージ、女性らしさや男性らしさという規範のこと
ジェンダーの特徴は、学習されるもの、という点です。私たちはまっさらな状態で生まれてきてから、周りの環境から、女性・男性として期待されているらしさを学んでいきます。
例えば、髪型や服装はわかりやすい例ですね。なぜ男性は髪を短くする人が多く、女性は髪が比較的長い人が多いのでしょうか?男性は髪がある一定の長さになったら髪が抜け落ちる運命なのでしょうか…?違いますよね。髪が短いことが「男性らしさ」で、長い髪が「女性らしさ」とされているため、多くの人が(自覚があろうとなかろうと)それに従っているといえるでしょう。
服装もそうです。洋服を買いに行くと、明確にメンズ、レディースとコーナーが分かれていて、ほとんどの人が無意識で自分が自覚している性別のコーナーで買い物をしますよね。男性がレディースコーナーにいると少し恥ずかしい思いさえするかもしれません。男性はズボンを履く、女性はスカートを履くことが、それぞれの「らしい」ファッションであるとされています。男性がスカートを履くことも、女性が丸坊主にすることも、もちろん法律違反ではありません。しかしほとんどの人は、あたかもそのジェンダー規範におさまらない格好をしている人を「異常」な人のように見てしまいます。それほど、このジェンダー規範は私たちの社会に深く根付いています。
ここまでジェンダーと性について説明をしてきましたが、もう一つジェンダーに関わる大切な考え方を紹介します。
ジェンダー・アイデンティティ(Gender Identity): 人物(person)に深く根差した、女性か男性か、あるいはそのどちらにも属さない性かといった心理的な自己認識。その人物の心理的な自己認識は、誕生時の性に一致しないこともありえます。
UN Women より引用
これは簡単に言うと、上で説明した性とは全く別もので、自分が自分のジェンダーをどう認識しているか、ということです。ここで重要なのは、このジェンダー・アイデンティティは一人ひとり違うということと、流動する、ということです。
例えば生まれたときの性に関係なく、ある人は自分は女性だと認識しているけれどあまり「女性らしい」格好をしないのがアイデンティティである場合もあれば、自分は男性でありかつ「男性らしい」格好をするのが自分だ、と思っている人もいます。そして女性でも男性でもない性だと思っている人もいます。そしてこの認識は時間とともに、何かのきっかけがあろうとなかろうと、変動することがあります。乱暴に一言で言ってしまうなら、十人十色で、100人いれば100人のジェンダー・アイデンティティがあるといえるでしょう。
いかがでしたか?今後、本日学んだジェンダーを取り巻く社会の現状について、みなさんと一緒により深く学んでいきたいと思っています。ジェンダーに関して、こんなことが知りたい、悩んでいる、怒っている、などなど、ご意見をお待ちしています。