LGBT+ ジェンダー その他 自己肯定

あなたも必ず持っている特権と、特権を持つあなたの責務

みなさんこんにちは。本日はダイバーシティ&インクルージョンの分野でよく話がされる、特権についてです。社会保障やインフラが充実し、単一民族の先進国と言われる日本に住んでいる人なら、ほとんどの人が自分の特権なんて意識したことはないかもしれません。日本みたいな進んだ国で、特権を持っている人なんていない、みんな平等だよ、と思うかもしれません。しかし、自分の特権を考える機会もなく人生を歩めること、それ自体があなたの特権かもしれません

今回のトピックの特権、特にダイバーシティ&インクルージョンの場で使われる特権は、生まれつき与えられた特徴や、その人の努力ではどうしようもできない特徴により、一部の人のみが享受できる優越した権利のことを言います。

自分の特権を考えてみよう

早速具体的な例を見ていきましょう。以下に、特権を考える時のチェック項目を作ってみました。是非自分自身で何個チェックができるか、考えながら読んで見て下さい。チェックができる=あなたに特権がある、という意味になります。ここに挙げたのはごく一部で他にも、多様な分野での特権があります。

  • 身体のどこかの調子が悪い時、病院に行くことができる
  • 何か悪いことをしてしまった時、自分が所属する社会的グループのせいにされることを恐れなくてもいい
  • 最近の流行りを取り入れた服を購入し、ファッションを楽しむことができる
  • 自分の方言やアクセントから自分の人間性や知識レベルをジャッジされることはない
  • どの季節でも自分の家は過ごしやすい温度を保てる
  • いつでもスーパーへ行って日用品や食品の調達ができる
  • 勉強するために安全で適切な環境へのアクセスがある
  • 金銭的な要因で大学や塾へ行くのを諦めたことはない
  • 自分の名前から自分の出身国が外国であることやルーツが想像できない
  • 自分の育った家庭内での言語と、住んでいる国で話されている言語が同じであった
  • 犯罪に巻き込まれた時は迷わず警察へ頼ることがでいる、警察官を信頼できる
  • テレビの中で自分と似た状況や境遇の人の意見を聞く・見ることができる
  • 今住んでいる国で、自分と同じ人種に対するヘイトスピーチはヘイトクライムは聞いたことがない
  • 自分の人種が原因で不利益を被ったことはない
  • 自分の人種やアクセントがフェティシズムの対象となる心配がない
  • 働く時に、きちんと給料が支払われるかや社会保障が適応されるかどうかを気にしたことはない
  • 自分の周りにはだいたい同じ国で育ち、同じ言語を話し、共通の話題がある人がいる
  • 18歳以上になれば自分の意見を政治に反映させるために、投票に行くことができる
  • 自分の生まれ育った国のために、公務員になることが選択肢として考えられる
  • 公の場でトイレや更衣室を使うことで、誰かに陰口を叩かれたり、禁止される心配がない
  • 他人からむやみに自分の性器の状態やセックスライフについて聞かれたりしない
  • 自分が自分で考える自分の性別が社会的に認められている
  • 海外旅行の際に、自分の見た目が問題で税関で止められる心配がない
  • 自分のジェンダーが精神疾患や病気と考えられる心配がない
  • 病院に行けば、自分に対して適切な処置がされると思う
  • 自分の将来の姿を想像する、ロールモデルが身近にいる
  • 初めて出会う人に対して自分のジェンダーについて説明する必要がない
  • パスポートや健康保険証などの性別欄は自分の思う性別になっている
  • 自分が着たい服を街で着る・買うことによって後ろ指を刺されたり、悪目立ちすることがない
  • 今住んでいる国で、自分の愛する人と結婚する権利がある
  • 自分の配偶者やパートナーが集中治療室に入った時、家族として付きそうことができる
  • 街中で恋人と手を繋いだり、愛情表現をすることで、他人から好奇の目で見られたり、敵意を感じることはない
  • パートナーと賃貸契約やローンを組む時に、相手を理由に断わられる心配はない
  • 自分のセクシュアリティを理由に解雇されない確信がある
  • 自分のセクシュアリティについて説明やカミングアウトをしたことがある
  • 同じ仕事をしている同僚と同じだけの賃金をもらえている
  • 公共の場や職場でセクシャルハラスメントを受けることを心配する必要がない
  • 自分の身体の特徴や服装から性的な想像をされる心配がない
  • 夜道を一人で歩くことに抵抗がない
  • 身だしなみや美についての基準に合致するため、金銭的な負担がある
  • 就職や昇進する際に、自分の婚姻状況や子どもの有無は全く問題にならない
  • 新しい場所へ行く時に、その場所がバリアフリーかどうかを気にする必要はない
  • 事前リサーチや介助なしで、一人で電車に乗れる
  • 雇用の獲得や仕事上の成果は自分の属性のおかげではなく、自分自身の功績として認めてもらえる
  • 自分がいることで周りの人の行動や選択肢を狭めてしまうかもしれないという心配はない
  • 自分や自分と同じ属性の人に対する同情や「かわいそうな人」というレッテルが社会にはない
  • どんな授業でも、職業でも自分の能力次第で受けたり就いたりすることができる
  • インターネットを使える環境があり、この記事を読めている

いかがでしたでしょうか?これ自分のことだ、というものもあれば、そんなの当たり前だし、考えたこともなかった、という項目もあったのではないでしょうか。人種によるもの、ジェンダーによるもの、セクシュアリティよるもの、社会的ステータスによるもの、など様々ありますが、それぞれの項目について解説していきます。チェックが付いた項目について、チェックがつかない人はどういう人か、想像してみて下さい。

医療へのアクセス

これらに関しては日本で日本人として生まれ、戸籍を与えられたのなら、当然としてアクセスがあるものである場合が多いですが、外国籍の方や、移民、無戸籍者(DVから逃れるためなどの理由で出生児戸籍が提出されなかった個人) にとっては様々な理由で、当然ではないものです。また、離島などだと病院がアクセスできる距離になかったり、島には高校までしかない、という場合もあるでしょう。

教育・食料の調達

こちらも物理的な理由(遠い、など)もありますが、多くは金銭的な理由です。食料に関しては親からの虐待などでアクセスができないことも想定できます。

少し脱線しますが、お金がなくて食料が満足に買えない人は全て痩せていると思っていませんか?肥満と貧困の関係は興味深く、実はそうではない場合があるのです。どういうことかと言うと、ヘルシーな食事は高く、ジャンキーなものは安い傾向にありますよね。同じお金で少しの野菜を買うか、ポテトチップスとコーラを買うか、だと、よりお腹を満たしてくれるのは後者になります。よって、より少ないお金でよく多くのカロリーを摂取しようとすると、ジャンクフードばかりを摂取することになります。貧困であっても肥満型の方もいるということになります。

人種・国籍に関するもの

例えば、日本は移民の受け入れにかなり後ろ向きです。これには移民が増えると犯罪が増える、治安が悪くなる、という世論も影響していると言われています。日本人の中には、外国の人が増えると犯罪が増えると思っている、ということは、既に日本に住んでいる日本人にとっては非常に居心地が悪い考えではないでしょうか。そのため、日本に住む外国人の方々は、日々何か悪いことが起こったら自分のせいにされることや、外国人が犯罪を犯すと、犯人が外国人であることが執拗に報道されることを恐れているのではないでしょうか。

また、外国人技能実習生が粗悪な環境、ブラック企業で働かされ、給料が払われなかったり自由を奪われてしまう、ということは実際に日本で起こっているのです。

トランスジェンダーに関するもの

例えばデパートに買い物に行った時、自分の望む性別へのトランジション前だったり、途中だったりするトランスジェンダーの方々は、自分が望む性別のトイレを使えないかもしれません。友達から海やプール、温泉、海外旅行に誘われても、心から喜べないかもしれません。また、医者も全ての人がトランスジェンダーに関して適切な知識を持っているわけではなく、自分の症状に対して適切な処置が行われるか、必要以上にプライベートな質問をされなくて済むかなど、心配事が多い場合もあります。街中で自分が好きなファッションをしているだけなのに、周りから笑われたり、写真を取られたりするなんてことも。

セクシュアリティに関するもの

日本は平等な国だから、法律に規定されている年齢を過ぎたら誰でも結婚できる、と思っていませんでしたか?恋人が出来て、その人と結婚したいと思った時、その恋人の戸籍上の性別が同性なら、結婚はできません。また、街中で手をつないで歩く同性カップル、見たことがない方が多いかもしれまん。しかしそれはいないのではなく、多くの同性カップルは周りの目が怖くて公の場の愛情表現ができないのです。そして日本にはSOGI(性自認、性的指向)と理由に差別をすることを禁止する法律が今現在ありません。例えばゲイだから、トランスジェンダーだからという理由で解雇されても、法律は守ってくれないのです。これがどれくらい不当かというと、関西出身のAさんは、今の会社で2年ほど働いていたのですが、急に上司から「ごめんねAさん、新しく来た社長が関西人嫌いでさ、来月から関西出身の社員は全員辞めてもらうことになったんだ」と言われて解雇された、みたいな感じです。ツッコミどころしかないですよね。(LGBT平等法の実現は、Equality Act Japanというキャンペーンで署名が行われたり、活発な実現へ向けた動きがあります)

ジェンダーに関するもの

例え同じ仕事をしていても、男性に比べて女性は賃金が低いのはよくあることです。最近女性の活躍がどの企業でも合言葉のように掲げられ、職場で昇進しても「ゲタを履かされている」と言われることを恐れている人もいます。未だに服装の決まりや制服があって、女性はスカートにヒールのような寒くて動きにくい格好を強いている会社すらあります。また、結婚や出産などのライフイベントは男性にも同じなのに、育児や家事はどうしても女性を結び付けられ、男性には「子どもができたから、もっと頑張って働いて昇進しろ」と言うのに、女性には「子どもの世話もあるから早く帰りな」とあまり責任のある仕事を任せてもらえなくなる、なんてこともあります。

身体障がいの有無に関するもの

例えば、駅のプラットフォームにて、駅員さんから介助を受けながら電車に載る車椅子に載った人、見たことありませんか?あのような形で介助を受けるには、都度駅の窓口で駅員さんにお願いする必要があるのです。人一倍時間はかかりますし、駅員さんのいない時間帯や駅だと電車は乗れないことになります。また、エレベータがない駅や改札、意外と多いので、事前にリサーチが必要です。これは駅だけの話ではなく、身体障がいのある方にとっては、新しい場所にいく時は、そもそも自分でアクセスができるかどうか、毎回事前のリサーチが必要なのです。また、就労の場面でも制限がかけられることが多く、企業のごく一部の障がい者枠しか選択肢がなかったりもします。最後に、日本では障がいのある人に「かわいそうな人」というレッテルを貼ったり、お涙頂戴的な文脈でメディアに登場させたり、一人の人間としてその人の本質を見てもらえないというストレスもあります。

特権を持つあなたの責務

みなさんにはどのような特権がありましたか?それについてどういう思いになりましたか?みなさんには是非、「恵まれない人もいるんだ」「自分にこんな特権があって幸せだと思った」で終わらせないでほしい、というのが私の思いです。もちろん、特権を持っていることは悪いことではないですよね。しかしそれと同時に特権を持っていないことも悪いことや、その人が責められるべきことではありません。だって自分の努力ではどうにもできないことなのですから。ただ一つ特権を持っている人に使命はある、と私は思っています。この私の思いを非常によく表しているのが、有名な漫画「鬼滅の刃」シリーズの柱の一人、煉獄杏寿郎さんの母、煉獄瑠火さんの言葉です。以下その言葉です。

なぜ自分が人よりも 強く生まれたのか わかりますか

弱き人を助けるためです

生まれついて 人よりも多くの才に恵まれた者は

その力を 世のため人のために 使わねばなりません

天から賜りし力で 人を傷つけること 私腹を肥やすことは 許されません

弱き人を助けることは 強く生まれた者の責務です

責任を持って 果たさなければならない 使命なのです

煉獄瑠火 (鬼滅の刃)

まさに私が伝えたいことを代弁してくださっています。現代の文脈に変えるなら、強い人=特権を持っている人は、その特権は天から与えられたもの=生まれつき、与えられたものであるので、その特権を乱用して、その特権を持っていない人を差別したり、自分の得のためだけに使うことは許されない。その代わりその特権を、特権を持たない、社会的弱者を支援するために使いなさい。ということですね。

特権を持っているということは、その特権を使って持っていない相手をLift Up、支援することができるのです。

どうやってその責務を果たせばいいの?

方法はたくさんあります。是非みなさんには始めやすい、自分に合った方法から始めていただければ嬉しいです。この使命を果たすことは、別の言葉で、アライになると言われたりしますね。この記事ではたくさんある方法の中の3つをお伝えします。

特権の正しい使い方の例〜アライへの道〜

  1. 興味を持つ・知る・発信する
  2. 特権を持つ側として、声を挙げる、行動する(シナリオあり)
  3. 弱者を支援するために活動している団体を支援する

①知る・興味を持つ・発信する

この記事を読んでくださったことは大きな一歩です。これをきっかけに自分の特権について、社会的にマイノリティの人たちについて、本を読んだり、ネットで正しい情報を得ることはすぐに始められます。このようにいろんな知識に触れると、自然と行動したくなるかもしれません。選挙で自分の意見を一番反映してくれる政治家に投票することの大切さにも気づくことができます。そしてその知識を是非自分のSNSにシェアしたり、友人に話をしたり、してみて下さい。実は私がこのブログを書いているのも自分の受けた教育という特権を生かして、発信をする、ということに使っている例です!

②特権を持つ側として、声を挙げる、行動する

これは実際、不公平なことや特権を持他ない人が不当な扱いを受けた時にそれを正すために行動をする、ということになります。シナリオを2つ挙げて説明します。回答例も一緒に案内しますが、正解はありません。

シナリオ①勤務中に

あなた:30代男性

上司:40代女性

状況:あなたはある会社で営業として働いています。ある重要な案件の商談に、上司と一緒に客先へ訪問をします。重要な商談なので、営業経験豊富で役員でもある上司の女性と一緒に客先へ向かいました。会議は無事始まったのですが、客はなぜかあなたにばかり話をし、上司の発言はさえぎったり、あまり目を合わせようともしません。この状況であなたはどうしますか?

回答例:客先は古い体質の会社で、女性が上司であるということを感覚として理解できていない可能性があるが、男性である自分の話は聞いてくれているので、会話の中で上司について「こちらは私の上司で、非常にこの分野での経験もあり、弊社取締役でもあります。」と再度紹介をするなど、上司がこのプロジェクトにおいて重要な役割を果たすことを顧客にリマインドする

シナリオ②日常生活で

状況:大学のサークルの飲み会で、6名ほど集まっています。その中で、特に仲のいい同性同士2人がおり、2人でよく出かけているみたいです。そんな2人を見て別のメンバーが「お前らすげぇ仲いいけどさ、できちゃってんの?」という発言をし、周りのメンバーが「うわ!そうなのかよ」「きもい」などと反応し笑いがおこりました。

回答例:

①その場で「別に同性で付き合っててもよくない?何が気持ち悪いの?」と真面目なツッコミをいれたり、「なんで笑うの?別にそうだったとしてもいいじゃん」と反応する・・けっこうこれは仲の良い関係じゃないと言いにくいかもしれません

②その場で決して笑わず、後からラインなどで発言に対して問題提起をしてみるまた、発言した人に個別で、冗談であったとしてもなぜその発言がまずいのかを説明し、二度と同じ状況が起こらないようにする

③弱者を支援するために活動している団体を支援する

この選択肢は自分で金銭的に自立出来ていることが前提ですが(これも一つの特権ですね)、自分で知ったり行動することには限界があるので、各分野で専門に動いている団体へ寄付、支援をする、という方法もあります。例えば、会社によっては自分の支援したい団体へ寄付をすると、自分が寄付した金額の同じ金額を上乗せして(2倍にして)寄付をしてくれる、という制度もあったりします。(私は自分が務める会社のこの制度を使っています)また、月額で例えば1000円くらいから寄付できたり、無理のない範囲で続けられるような形で支援をするのもありですね。NPO団体は本当に様々ありますので、これも改めてどこかのタイミングで記事にできたらいいなぁ〜と思っています、、。

参考文献

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