ジェンダー

ジェンダーと言葉に関する「もやっ」とすること

みなさんこんにちは、本日のお話は、ジェンダーと言葉との関係についてです。この話題は、ずっと書きたかったことで、かつ話し出したら後がない話題なので、今日はまず、food for thought (考えることのきかっけ)として「ジェンダーと言葉」に関することについて、私が普段「もやっ」と思っていることを6つ、書きたいと思います。みなさんが普段の生活で聞く言葉で「もやっ」とすることは何ですか?

  • もやっとその1:女性の理想的な言葉づいかいと、男性のそれ
  • もやっとその2:特定の職業やスポーツに使われる「女子」
  • もやっとその3:女偏の漢字=悪い意味が多い
  • もやっとその4:全てのジェンダーの人を表す言葉なのに
  • もやっとその5:女性だけ下の名前で呼ばれている現象
  • もやっとその6:奥さん?お嫁さん?旦那さん?ご主人?

言葉と文化の深い関わり

言葉は使われる国の文化に深く根差しており、相互関係があると言われています。例えば、日本語で雪を表す単語は「雪」のみですが、雪深いところに住むイヌイットの言語には、その状態や用途によって7種類もの別の単語を使い分けています。彼らにとって雪がどれだけ日常に身近で、かつ生活に重要なのかが反映されているのですね。他にも、日本には明確に目上の人や丁寧に話す時に使う敬語がありますが、英語では日本語ほど明確にはありません。これは日本はより上下関係や礼儀を重視する文化がある、ということが読み取れます。このように、言葉はその生活環境や文化をよく表しています。

ではジェンダーという観点で見ていけばどうでしょうか?普段無意識に使っている言葉、特にジェンダーに関する言葉についてみていくと、それが固定観念を作ってしまっていたり、今より遥かにジェンダー規範が明確だった時代に作られた、時代遅れな言葉の影響が逆に現在の私たちに無意識のうちに、間違った認識を植えてしまっている可能性もあるのです。

日本語の言語の特徴

日本語は文字を見るだけで、話している人の性別や特徴を推測できてしまう、というユニークな点があります。例えば、以下のような言葉を発している人はどんな人だと思いますか?

 A「これからご飯を食べますね。お腹が減っているもの。」
 B「今から飯でも食うぜ。腹が減ってるからな。」
 A「あら、雨が降ってきたわ」
 B「くそっ、雨降ってきたじぇねーか」 

Aは女性の言葉、Bは男性の言葉、ということはほぼみなさん共通の認識ですよね。このように同じ日本語でも男性が使うとされている言葉と、女性が使う言葉とされているものが別れている場合があるのです。そしてこの点は英語に比べるとかなり日本語では顕著です。雨の例文を英語にしてみても、Wow, it’s raining. となり、性別を特定することはできません。


もやっとその1:女性の理想的な言葉づいかいと、男性のそれ

上記のような日本語の特徴から、女性は、きれいで「女性らしい」言葉づかいをしなければいけない、というのは多くの女性が一度は言われたことがある言葉ではないでしょうか?私も、小さい時から言いたいことを一番自分が適切だと思った言葉を使って表現すると、「女の子なのに、なんて言葉の使い方!」や、「そんな言葉使わない!」というのはよく言われていました。女性が使うべきでないとされている言葉とは、例えば、「でかい」とか「お前」とか「箸」などがあります。また、女性らしい言葉遣いは、男性モテに関連づけられたものが多いのも、もやっとします。もちろん「でかい」とか「お前」「箸」よりは、正式な場で使える「大きい」や「あなた」「お箸」を使う方がきれいな言葉かもしれません。しかしやはり女性が使うべきではない、とされる傾向が強く、かつ同じ言葉でも男性が使うと「強さ」と結び付けられる場面が多いのも、もやっとポイントです。男性も女性も、自分の感情や状況に正直に言葉を使っていいはずですし、TPOに合わせて丁寧な言葉や相手に尊敬を示す言葉を使うのはジェンダーに関わらず必要なことですね。

もやっとその2:特定の職業やスポーツに使われる「女子」

次に紹介するのが、職業にまつわる言葉に関するジェンダーのもやっとです。以下の職業、一般的に使われている言葉ですが、実は女性側にだけ「女性」や「女性」がついています。

  • 女子アナウンサー
  • 女子サッカー
  • 女性起業家
  • 女医
  • リケジョ
  • 女流作家

女子アナは少し特殊ですが、その他は一般的に日本では男性の人数が圧倒的に多い職業です。おそらく「女子」が付く前は、それらの職業やスポーツには男性しか想定されていないもので、男性のイメージが圧倒的に大きい言葉でした。それが後になって女性が活躍するようになってきたため、「女子」と付けるようにしたのでしょう。このケースの懸念点は、女性にだけ「女子」を付けると、いつまでたってもこれらの職業は男性のもの、というイメージがなくならないだけでなく、今からの世代の子どもたちにも、これらは男性の職業なんだ、というイメージが無意識についてしまう可能性もあることです。これらの言葉を使う時に考えていただきたいことは、①そこに女性か男性かの情報は必要でしょうか?必須ではない場面が多そうですよね。かつ女子、男子だとそれに当てはまらない人を除外してしまいかねません。どうしてもジェンダーを特定したいときは②「女性」と同じように「男性」もつけるのが望ましそうです。

もやっとその3:女偏の漢字=悪い意味が多い

女偏の漢字

女偏の漢字はこのようにたくさんありますが、単純に女性を表すものもあれば、ネガティブな意味を持つものが多いのです。例えば、妬、嫉、奴、妖、嫌・・。なぜ女偏の漢字はこのようにネガティブな意味のものが多いのでしょうか。

その答えは漢字が誕生した時代を考えると明白になります。部首が登場したのは、今から5000年以上前ですので、その時代の社会は家父長制が今より遥かに色濃かったでしょう。そんな時代に生きる男性によってつくり出された言語は、それを反映しなければならなかったというのはごく自然なことでしょう。言語学者のデヴィッド・モーサーが述べる通り、言語の多くは「隠された性差別」で溢れているのです。これは日本語だけでなく、英語にもあるようですね。例えば証言するという意味のtestify という言葉ですが、これは真実を証言するのは玉 testicle のある男性のすることだ、という考えからできているそうです。(諸説あるようですが)

もやっとその4:全てのジェンダーの人を表す言葉なのに

それ以外にも、以下のような言葉、ありますよね。漢字は男性を表す漢字を使っているのに、全ての人を表しています。

  • 父兄・・保護者のこと、最近は保護者と言い換えられることが多い
  • 兄弟・・英語でいうSiblingsで、男性のきょうだいも女性のきょうだいも表す
  • 弟子・・でし。先生から教えを受ける人。
  • 子弟・・してい。恩師とでしの関係のこと
  • 少年・・年の若い人、特に男性を意味するが、少年院や少年法など、両方を含む場合も多い

これも漢字が作られた頃のことを考えると、家族の代表としてカウントされるメンバーは男性だけだった、ということや、知識を得るのは男性のすること、ということが反映されているんですね。これらの言葉、どのように使う、もしくは使わないのがいいんでしょうか。私もまだ答えは出ていません。例えば、父兄は保護者に言い換えることはできますよね。兄弟もひらがなできょうだい、と書いたり、兄妹や姉弟のように書くこともできそうです。

最後の少年に関しても、英語のManに似たような形ですが、メインは男性という意味なのですが、女性も含んだ意味として使われてもいる言葉です。少年院という言葉はあっても少女院はありませんよね。これも私はもやっとしてしまうのです。

もやっとその5:女性だけ下の名前で呼ばれている現象

浅田真央選手を取り上げるスポーツ紙

次に紹介するのが、女性の有名人、社会的地位のある人に対して、下の名前で呼ぶ現象です。例えばスポーツ選手。上記の画像のように、フィギュアスケートの浅田真央選手に対して、真央や真央ちゃん、など下の名前(+ちゃん)を付けて呼んでいるのに、男性の選手はフルネームでや苗字で呼んでいることや、最近だとスポーツ紙やSNSなどで小池百合子都知事のことまで百合子と下の名前で呼んでいるのを見かけます。これが男性だったら、下の名前で呼ぶことはまずありません。これはどういうことを意味しているのでしょうか。親しみを込めて下の名前で読んでいるんだよ、と思われる方も多いかもしれませんが、下の名前で呼ぶこと=年下や地位が低いという意識の現れです。フルネームで読んだり、◯◯選手、や〇〇知事というという呼び方はある程度地位のある人へ尊敬や敬意を表していることは明らかですよね。おそらく新聞社や週刊誌の記者は男性が多く、チェックをするのも男性、または男性が多数の環境なのでしょう。そんな環境の中で、男性目線で女性を書く際、親しみを込めているのか見下しているのか、そんな意識が下の名前で呼ぶ、ということに繋がっているのではないでしょうか。

もやっとその6:奥さん?お嫁さん?旦那さん?ご主人?

最後に紹介するもやっとは、配偶者の呼び方です。これは私自身も、日々葛藤と模索をしながら考えている言葉の問題です。一般的に配偶者の呼び方は、「夫」と「妻」が公式書類などでも使われるものです。しかしこれは当事者同士での呼び方で、私の夫、私の妻、という風に使います。では友人や会社の同僚の配偶者を呼ぶ時はどうでしょうか?「奥さん」「お嫁さん」「旦那さん」「ご主人」という言葉が一般的ではないでしょうか?これ、私的にはめっちゃもやっとします。奥さんは、家の奥にいる人みたいだし、お嫁さんだと嫁に行く、みたいな昔のイメージだし、旦那も主人も一家を取り仕切る人、という意味があり、私の家族観には合いません。このもやっとに対しての私の現時点での解決策は、「パートナー」が一番しっくり来ています。パートナーだとLGBTQ+の人たちにも使えます。しかし、ビジネスの場やちょっと堅い場所では、パートナーで分かってもらえるかがわからず、不本意ながら、「奥さん」や「ご主人」を使っています。パートナーだと、ビジネスパートナーのような意味合いもあったり、結婚をしている、という意味が伝わらなかったりするので、なにか新しい言葉ないかしら、、。と思っております。

最後に:ネガティブな影響を少しでも小さくする動き

このような言葉のもたらすネガティブな影響や現代に見合わない言葉を見直す動きが出てきています。言葉は日々使うものなので、今日から実践できるものもたくさんあります。みなさんも是非以下のような言葉の見直しを参考に、普段使う言葉について考えてみるのはいかがでしょうか?

・飛行機でのアナウンス「Ladies and Gentleman 」の廃止・・最近日本航空がこのアナウンスを廃止し、Everyoneなど、よりインクルーシブな言葉に変更をする、というニュースがありました。ノンバイナリーの人など、男女に当てはまらない人も全てを含むための配慮ですね。

ブラックリスト/ホワイトリストの見直し・・日本語でも黒=悪い、白=良いという意味で使われていますが、人種差別への無意識の加担への懸念から、見直しがされてきています。考えてみるとその通りで、黒が悪いって誰が決めたんだろう、と考えてしまいました。私も今まで何の疑問も持たず、ブラック企業・ホワイト企業とか、ブラックリスト・ホワイトリストとか使ってしまっていましたが、欧米を中心に、この言葉を別の言葉に言い換える動きが進んでいます。同じように、化粧品の「美白」や「ホワイトニング」に関しても大手メーカーが表現を変える動きがあります。

その他言葉の言い換え・・保母さん看護婦などの言葉、以前は女性の職業とされていたため、そのような漢字が充てられていましたが、現代は女性の職業ではないため、看護師、保育士に変更されていますね。その他にも、サラリーマンやOLを会社員に言い換えることもできますし、奥さんや旦那さんをパートナーに言い換えることもできますね。(宝塚市が発行しているこちらのガイドライン、とっても参考になります)また、英語でよく使われるGuysという言葉も、男性に対して主に使う言葉なので、Hi guys ではなく、Hi everyone など、よりインクルーシブな言葉が使われるようになっています。

いかがでしたか?是非感想など、メールやコメントにて教えていただけると嬉しいです。


 参考文献
 Wired I ことばに潜む「性差別」を浮き彫りにする「新しい漢字」
 HamaZo I 前から不思議に思っていた「女偏の漢字」、悪い意味で使われる漢字が多いけれど意味深い意味の漢字も
 毎日新聞 I 日本航空「Ladies and Gentlemen」廃止 性的マイノリティー配慮
宝塚市 I 男女の表現について いっしょに考えてみませんか ~男女共同参画の視点に立った表現ガイドライン~ 
ラララ言えるかな I 【氷上の妖精】13年前(2005年12月18日)のスポーツ新聞一面

コメントを残す