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アクティブバイスタンダーのすすめ

アクティブバイスタンダーとは?

みなさんはアクティブバイスタンダーという言葉を聞いたことはありますか?英語の Active Bystander をカタカナにしたもので、直訳すると、「行動する傍観者」となります。傍観者 [ぼうかんしゃ] とは、当事者・被害者・加害者でもない、その物事に関係ない第三者で、ただ見ているだけの人、という意味の言葉ですが、アクティブバイスタンダーには、それにアクティブ、行動するという言葉が付いています。

こうなると、ただの傍観者とは逆の意味を持つ言葉になるんです。誰かが危険な状況や差別的な言動にさらされている場に第三者としで居合わせた時に、その状況に対して被害者や加害者に対して積極的に行動を起こす人をアクティブバイスタンダーと呼びます。

アクティブバイスタンダーの例

では実際にアクティブバイスタンダーとは、どのような場面でどのような行動を取ることなのか、もう少し具体的な例を以下に2つ挙げます。

  • 駅の構内や電車の中で置換や盗撮している人に注意をする、被害者に声をかける
  • 学校内や飲み会の場でLGBTQ+の対する差別的な発言に遭遇したら注意をする、自分はそう思わないことを表明する

上記の例はアクティブバイスタンダーの話が出る時に取り上げられる代表的な例です。多くの場合が社会的に弱い立場にある人に対して行われる差別的な言動、違法な行動(多くの場合性的なもの)に対して、それは正しくない、私はそう思わないと声を上げる、行動する人のことを言いますね。アクティブバイスタンダーについて、とても分かりやすい動画をYoutuberのシオリーヌさんが作成されているので、こちらで紹介させてください。こちらを見るとより具体的にイメージが湧くと思います。

理想の社会では

本当は差別的な言動や違法な行為がまずなくなること、加害者がいなくなることが根本的には大切ですし、そんな社会になればいいですよね。ただ現状そのような状況にないこともあり、悲しいことですが、被害は起こり続けています。その状況に対して、居合わせた第三者が見逃している、ということも、被害を助長することに繋がっていないでしょうか?より多くの第三者、傍観者が声を上げることで「あなたの言動は許されない」「私たちは見ている」という風潮を社会全体で作っていくことが、被害を減らしていくために重要なことの一つだと思います。

アクティブバイスタンダーのリスク

ただアクティブバイスタンダーになるには、多かれ少なかれリスクがありますし、勇気がいるのも事実です。「この場で声を挙げたら、周りにどう思われるだろうか」、「場の空気を壊してしまうかもしれない」「この場で行動すれば、加害者の矛先が私に向いてしまうかもしれない・・。」このような考えが先走り、このリスクを犯すくらいなら、何も言わないでおこう、見てみぬふりをしておこう、そう思っている人が多いのも事実ですね。そしてもちろん、自分への危険を顧みずに行動すべきではありません。しかしアクティブバイスタンダーになるということは、「加害者に立ち向かう」ことだけではありません。

いろいろある!アクティブバイスタンダーのなり方

例えば先程の飲み会の場でLGBTQ+に対する差別的な発言に遭遇したら、という例ですが、この場合の行動の仕方にはいくつかあります。以下に具体的な行動の例を記載します。

  1. その場で、差別的な発言者へ注意をする
  2. その場で、自分の意見(自分はそうは思わないこと)を発言する
  3. その場で、別の話題に振って話を切り替える
  4. その場で、こっそり発言を受けた人へ声をかける
  5. 後日、発言者へ直接またはメールやチャットなどで「あの発言はまずかった」ことを伝える
  6. 後日、適切な窓口(会社なら人事、上司など)へ報告し、注意勧告をお願いする
  7. 後日、発言を受けた人へのサポートを伝える

このように、その場で行動する選択肢もあれば、後日行動する選択肢もありますし、その場で行動する選択肢の中にも相手との関係性によって、様々な行動の仕方がありますね。この観点で、アクティブバイスタンダーになるために、ケンブリッジ大学が提唱しているABCアプローチというものがあるのでご紹介します。この原則を頭の中に置いておくといいですね。

  • Assess for safety – あなたの安全の確保: 行動を起こす前に自分の安全が確保されているかどうかを確認しましょう。
  • Be in a group – グループで行動しよう: より安全に行動するためには、グループになって行動することです。一人の場合は行動できる人に助けを求めましょう。
  • Care for the victim. – 被害者への心遣いを忘れずに:助けが必要な人への声掛けをしましょう。大丈夫かどうか、どのようなサポートが必要か、味方であることを伝えましょう。 

また、実際に加害者に立ち向かうこと以外にも様々な助け方があるということを示したこちらの国連が作成した動画も紹介させてください。

それでもアクティブバイスタンダーになるメリット

なんだかリスクが多いように感じるアクティブバイスタンダーへの道のりですが、多少のリスクを負ってでも行動するあなたにもメリットがあります。誰にでもメリットがあるものです。

例えば私が思うメリットは

正しいことをすること、誰かを助けることって気持ちいい

自分がおかしいなと思うことに対して行動をして、誰かに感謝してもらうという体験は自分の自信に繋がりますし、自分にとって気持ちがいいことです。ただ他人のためのお人好しの行動というよりは、行動する本人が得ることも多いです。それを見た周りの人も勇気をもらうこともあると思いますし、行動をする人をみたら、「あんな風に行動するって素敵だな」「自分もあんなふうに行動してみよう」と周りの人をインスパイアしているかもしれませんよね。

◎誰かを助けることは、まわりまわって自分に返ってくる、大切な人を守ることになる

先程のポイントとも重なりますが、将来の自分を助けることになる、将来大切になる人を守ることになる、というポイントもあります。社会的弱者になってしまう可能性は誰にでもあります。ある日急に障がいを負ってしまう可能性もあれば、妊娠する、小さな子どもができる、自分の子どもが学生になり満員電車で通学するということも十分ありますよね。自分が社会的に弱い立場に現在なくても、自分が、自分の家族が、将来自分の家族になる人が弱い立場になることは誰にでも可能性があります。その時、自分が、自分の大切な人がどこにいても尊重されて、住みやすい社会であることは非常に重要なことですよね。

アクティブバイスタンダーのすすめ – 小さいことから始めよう

ここまで読んで、じゃあ自分もできることからやってみようと思っていただいた方へ、最初の3つのステップを提案させてください。

①小さいことから始めよう

おすすめは、小さいことから始めることです。例えば、街中でものを落とした人(自分の知らない人)のために拾ってあげる、電車で席を譲る、道を迷っていそうな人に声を掛ける、観光地で自撮りをしているグループに「撮りましょうか」と声を掛けるなどなど、見知らぬ人に対して声をかけることにまずは慣れるところから始めてはいかがでしょうか。これらの行動は冒頭でご紹介したアクティブバイスタンダーの定義より小さいことかもしれませんが、私の中では立派なアクティブバイスタンダーへの第一歩です。

その他にも、自分が「おかしい」と思うことに声を挙げること、これもアクティブバイスタンダーと言えると思っています。例えば政治家の女性蔑視の発言に対して反対する署名にサインをする、おかしいと思うことを自分の友人に話をする、SNSで発言するなど。日常に近いところから、自分が興味のあるところから始めて見ると少しハードルが下がるのではないでしょうか?

②助けを必要な人を知ろう

これも意外と大切なことで、なぜなら、なかなか自分がその立場になるまで、また当事者の友人ができるまで、色々な社会的弱者の困っていることは知る機会すらないこともあるからです。身近なところでどのような犯罪があるのか、どこで起こりやすいのかを知ることが非常に大切です。電車内だけでなく、構内のエスカレーターなどで盗撮は起こっていることや、マタニティマーク、ヘルプマークの存在を知ること、実際にそれをつけている人はどのような人なのか少し調べてみるなど、それだけで様々な気づきがあります。

例えば、マタニティマークは、お腹が大きくなってきて外見でも分かる中期や後期の妊婦さんだけでなく、外見ではわからなくてもつわりなどでしんどい思いをしている妊婦さんもつけていて、個人差はあるけれど、外見ではわからない初期が一番辛い人もいること。例えばヘルプマークをつけている人は、一見健康で身体的な障がいがないように見えても、内部障がいなどを抱える人もつけているということなど。

③まわりの状況を把握する

とは言え、助けを必要としている人なんて、そんなに頻繁に出くわすものじゃない、私はあまり見かけない、と思う人もいるのではないでしょうか。実はそんなこともありません。たとえ小さなことでも、あなたが気を配っていれば今まで見えていなかった人が見えてくることがあります。例えば、移動中、電車に乗っている時、イヤホンをつけて、スマホばかり見ていませんか?友人との会話ばかりに夢中になっていませんか?イヤホンをつけながら、スマホを見ながら、友人と話をしながらでも、意識してたまに周りの人や状況に気を配るだけで、だいぶ見える景色が違ってきます。周りに助けを必要な人がいても、あなたが見つけてあげなければ助けることはできません。

この人に助けが必要かどうかわからない場合、迷う場合はシンプルに声を掛ける、大丈夫か聞く、それだけでも十分です。

最後に

いかがでしたでしょうか?アクティブバイスタンダーと聞くと畏まった言葉に聞こえますが、単純に困っている人を積極的に助ける、声を上げることですよね。ただこれにはリスクも伴うので、きちんと自分の安全も確保する。そしてそもそも助けが必要な人のことを知る、周りの状況を把握すること、これらを実施できれば、あなたも今日から立派なアクティブバイスタンダーなのです。より多くの人がアクティブバイスタンダーになって、より住みやすい社会に近づければいいなと願っています。


参考文献

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