LGBTの人たちは何に困っているの?
みなさんこんにちは。今回はLGBTQ+ に関する記事です。LGBTQ+ の定義や多様な性についてはこちらの記事で紹介させていただきましたね。LGBTQ+ は最近メディアで取り上げられることも多いですし、知ってるよ、という人は多いかと思います。本日は、そこから一歩先、LGBTQ+ の人たちが、何に困っているのか、について書いていこうと思います。これらを知ることで、読んだ人が自分の特権について認識し、積極的に全てのSOGI の人たちにとって社会が平等になるように、小さなことでもアクションできるようになればと願います。
目次
- 結論から先に、、、
- 法律・制度に関わるもの(ハード面)
- 上記のような結果起こる日常へのしわ寄せ(ソフト面)
- 制度を変えようとする動き
- わたしたちにできること
- LGBTQ+ を支援する団体の紹介
目次
結論から先に、、、
最初に結論から言います。LGBTQ+ の人たちは、じゃあ結局何に困っているのか、回答は「千差万別です」となります。一口でLGBTQ+の人、といっても、レズビアンの人とトランスジェンダーの人では直面する課題は違いますし、同じレズビアンの人の中でも一人ひとりの状況によって、抱えている課題は様々です。言うならば、女性は何に困っているの?と一口に言われても、千差万別なのは想像しなくてもわかりますよね。それと同じで、結局のところ、その人が何に困っているかはその人に聞いてみなければ分かりません。今の生活に満足していて、何にも困っていないLGBTQ+ の人だっているかもしれません。その前提をお伝えした上で、現在の日本で多くのLGBTQ+の方たちが特に声を挙げている課題がありますので、それらを取り上げて説明します。
法律・制度に関わるもの(ハード面)
●結婚ができない
現在の日本では、戸籍上の同性同士は籍を入れることができません。結婚ができないと、それに伴いたくさんの不利益を被ります。例えば、以下のようなものがあります。
- 住宅の確保が難しい・・結婚している夫婦や婚約している男女のカップルに比べて審査が降りないことが多いため
- 医療面でも不便を被る・・もしもパートナーに何か合った時に病院の同意書にサインしたり、立ち会いができなかったりします
- 両親として子どもを持つことができない・・LGBTQ+のカップルが子どもを持つ方法は様々です。例えば前のパートナーの時の連れ子がいたり、精子提供や、養子縁組などです。しかし、子どもを持って2人で育てていても、法律的には片親でしかないのです
- 金銭的な負担を強いられることも・・扶養控除や社会保障が認められず、金銭的な負担が多きかったり、勤めている会社に配偶者としての申告ができないことで、本来結婚しているカップルに認められる福利厚生が受けられなかったりします
この他にも外国籍のパートナーの永住権を申請できなかったり、相続人としての設定ができなかったりなど、様々な不利益があるのです。また、婚姻制度そのものを問題視する声もあります。
●戸籍の性別の変更の条件のハードルが高い
トランスジェンダーの人が、出生児に割り当てられた性別から、本当の自分の性別に変更したい場合は、裁判所が定める、以下の条件を全てクリアしている必要があります。
- 二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること
- 20歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
この条件の中で一番ハードルが高いのが、5番と6番です。これは具体的には、性別適合手術を受けている必要がある、ということなのですが、トランスジェンダーの人の中にも、様々な理由から、この手術を望まない人もいます。その大きな理由が、金銭的、身体的負担です。金銭的には、日本で性別適合手術を実施する場合は数百万円(タイなど、海外で実施する方々もいらっしゃいます)かかります。ホルモン注射での治療を行っている方も多いのでそれに加えての負担です。かつ身体的にも大きな負担がかかります。そして働いている場合は会社も最低1ヶ月は休む必要があります。そもそも手術は、金銭的に相当余裕があり、身体も健康で、そのリスクも受け入れることができる人しかできないのです。
●差別的な言動を禁止する法律がない
LGBTQ+ に対する差別的な言動を制限する法律は、LGBT 平等法とも言われ、世界各国で整備が進んでいる法律です。G7の国のうち、平等法がないのは日本だけです。SOGI ( 性的指向や性自認 ) を理由に不当な差別を受けることは残念ながら日本では珍しいことではありません。例えば以下のようなものがあります。
- トランスジェンダーであることを理由に面接打ち切りにされた
- レズビアンであることがばれて、遠くの支店に飛ばされてしまった
- ゲイであることを理由に老人ホームの利用を断られてしまった
- 「オカマみたいなやつに営業はさせられない」と内勤にさせられ、給料も下がってしまった
どれも明らかに不当な差別ですよね。しかし現在の平等法がない状況だと、泣き寝入りを強いられてしまう当事者も多いのです。
上記のような結果起こる日常へのしわ寄せ(ソフト面)
上記のような法律や制度に関わるものの他にも、日常に関わることで困ることもたくさんあります。ほぼ上記のような制度がないことから来るものが多いのですが、日常で経験することですので、その分負担や影響が大きいものです。例えば以下のようなものがあります。
●自分の将来の姿を描きにくい
自分の家族や親戚の中にも、テレビをつけても、LGBTQ+ の人たちが他の人と変わらない姿で多様な分野で活躍し、幸せな大人、老後を過ごしている姿はあまり見ることができません。このことから、自分は将来幸せになれるのだろうか、と将来に対して漠然とした不安を持つ人たちも多いのです。そもそも結婚ができないので、その事実を知って絶望する人もいるかもしれません。
●日常的に、何気ない周りからの差別発言・傷つく発言がある
日本では直接的に、LGBTQ+ だからといって面と向かって「キモい」などと言われることは少ないかもしれません。しかし結婚していない人に対して「結婚しないの?」という発言や、「あの人40になっても結婚してないなんで、訳ありだよね」とか「もしかして、あっち系何じゃないの?!」という発言はとてもよく聞きます。また、このような発言を恐れてありのままの自分を隠して過ごしたり、プライベートな話題になる度にびくびくして過ごす、そんな日常で精神がすり減ってしまう人も少なくありません。
●性別二元論が前提での施設や制度を利用できない
LGBTQ+ の人たちの中には、自分の性について男性や女性ではない性を自認している人もいます。また、生まれた時に決められた性から自認する性へトランジションしている最中の場合の人もいます。男性でもない、女性でもない、そうなると、日常のあらゆるところで不便が生じます。例えばトイレ。公共のトイレはほとんどが男性・女性で別れています。またプールの更衣室、ジムのロッカールームもそうですね。これらを利用する際、どちらを利用すればいいか、そして利用した際に周りから非難や攻撃されることがないかという不安がついて回ります。みなさんの身近なところだと、制服がある学校も男女で別のものが決められていて、戸籍と同じものしか選ぶことができなかったり、役所の書類やその他会員登録などの際も性別が男女に限定されていることが多いです。このような身近な場面で「ないもの」にされてしまっていることが日常的なストレスとなります。
●日常的なストレスの結果:うつ病、精神障害、自殺率
これらのことが積み重なることによる影響は、実際に数字にも現れています。LGBTQ+ の人たちのうつ病の発症率、精神障害を抱える人、自殺率は、そうでない人に比べていずれも高いのです。例えば、日本人のうつ病の生涯発生率は6%前後と言われている中で、2020年に行われた調査によると、LGB他で13.8%、Tで20.0%の人がうつ病を抱えていると回答した調査があります。また、国内外の調査で、LGBTQ+ とそうでない人の自殺率を比べると、前者の方が高い、ということは度々数字で証明されています。このLGBTQ+ を取り巻く制度の問題、日常生活の差別やストレスの問題は、人の命に関わる社会問題です。
制度を変えようとする動き
●結婚の平等実現に向けて
2019年から28名の同性愛者らが「法律上、同性カップルも異性カップルと平等に結婚ができるようにしてほしい」と札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁で国を訴えてきました。この中で唯一判決が出たのが、札幌で、この判決は歴史的なものでした。日本の歴史上初めて、同性同士が結婚できない現在の法律は、法の下の平等を定めた憲法14条に反する、という違憲判決を下したのです。まだ東京、名古屋、大阪、福岡の判決はこれからです。今回の判決で違憲である、という判決が出たからと言って、すぐに結婚の平等が実現されるわけではありません。まだまだ長い道のりがあり、まずは他の裁判で違憲判決を積み重ねていき、これを政治の場でより活発に議論してもらい、憲法改正なのか民法の整備なのかで制度を整え、結婚の平等を実現する必要があります。
●性別変更要件の緩和に向けて
2019年11月、超党派でLGBT の課題に付いて考える、LGBT 議員連合の総会にて、性別変更要件の緩和についてのヒアリングが行われました。ここでは当事者の状況など、現状の把握を当事者などから行われたようです。また、2004年に特例法が施行されてから累計で性別変更をした人が1万人を超え、年々増加傾向にあることから、この条件緩和に対する動きがより活発になることが期待されています。
●LGBT 平等法の実現に向けて
Equality Act Japanという様々な視点でLGBTQ+ に対する活動を行っている複数の団体が行っている署名キャンペーンがちょうど先日まで行われていました。もちろん私も署名しました。集められた10万を超える署名を、各政党に提出し、LGBT平等法実現に向けての議論を促しています。
●広がるトランスジェンダーの人たちへの対応
まだごく一部ですが、学校の制服のスカートとズボンを自分の性別に関わらず選べるようになる学校が出てきています。また、不要な場面での書類などでの性別欄の廃止、また男女の他の選択肢を作ることなども進んでいます。よく考えると、殆どの場合で性別って不要なんですよね。男女がわかったところで個人を特定できるものでもないですし、男性だから、女性だからといってサービスの質やサービス自体が変わる必要もないと思います。また、最近だと、性別欄のない履歴書をコクヨが発売したことがニュースになりましたね。少しずつですが、このような動きが広まってきています。
わたしたちにできること
最後に、これらの変化の動きをより後押しするために、みなさんにできることのアイデアをご紹介します。
●初級 – LGBTQ+ について知る、発信する
これは誰にでもできますね。家族や友人と話をしてみる、SNSなどで情報収集する、記事をシェアする、署名をする、フォローするなど、今日からできることですよね。これをすることによって、少しずつでもLGBTQ+ が直面する問題について考える人が増え、世の中が変わっていくと思います。
●中級 – 自分が所属する会社や学校などでアクションを起こす
具体的には、外部の講師を招待して講演会を行うことなどです。これをすることで、学校や会社の制度が変わるきっかけになるかもしれません。また、学校だとLGBTQ+ について考えたり行動するサークルは全国の大学であります。このような団体を通して周りへの情報発信をしたり、学校側へ働きかけたりもできますね。
●上級 – 団体への支援
本日紹介した制度の実現や、差別の撤廃を目指して日々活動しているNPOなどの団体が数多くあります。これらは営利目的で行っていないため、個人や法人からの寄付は命綱です。自分一人でできることは小さいかもしれませんが、これらの団体へお金の寄付という形で応援することによって、その道のプロのお手伝いができるのです。お金の寄付だけではなく、自分のスキルを無償で提供することや、ボランティアとして活動することなどもできますね。
LGBTQ+ を支援する団体の紹介(この他にも多数あります!)
- 認定NPO法人 虹色ダイバーシティ・・主に法人のLGBT研修、全国的な調査などを実施している団体
- 一般社団法人 Marriage for All Japan ・・日本での婚姻の平等を目指し活動している団体
- 認定NPO法人 ReBit・・教育に焦点を当て、学生や教員向けの研修、イベントなどの開催を実施ている団体
- NPO法人 LGBTの家族と友人をつなぐ会・・文字通り、当事者とその家族、友人のコミュニティづくりをしている団体
- 日本セクシュアルマイノリティ協会・・生活の中の様々な場面でLGBTQ+ が直面する課題を支援している団体
参考文献
- NHK I LGBT当事者アンケート調査
- NPO法人 Rebit I LGBT子供・若者セミナー
- 同性婚人権救済弁護団 I 「同性カップルの直面する法的問題」
- 裁判所 I 性別の取扱いの変更
- HUFFPOST I 性別変更「手術要件なくして」 LGBT議連が「性同一性障害特例法」の要件について関係者からヒアリング
- 日本経済新聞 I 性別変更者 1万人迫る
- NPO法人 虹色ダイバーシティ I LGBTと職場環境に関するアンケート2020
- 朝日新聞 I 性別欄のない履歴書、コクヨが23日発売 様式例削除で