Diversity&Inclusion その他

DEI って知ってる? – 企業のダイバーシティ施策を学ぼう –

近年企業では会社を挙げてダイバーシティ施策や、多様性を掲げた取り組みを行っている会社が多いですよね。欧米の外資系企業がリードをし、日本でも大企業を中心に専用のページを作って、ダイバーシティ施策をアピールしています。最近だと、SDGsのジェンダー平等の文脈で取り組みを行っている企業も多く見かけます。日本企業だと例えば、トヨタファイナンスや、パナソニックメルカリなど、名前を聞いたことのある企業であれば、ほぼほぼこのような特設サイトやページを作っています。

本日はこのような企業でのダイバーシティ施策についてみていきます。みなさんが将来就職や転職をする時には、よりダイバーシティ施策に力を入れている企業を断然おすすめします。理由は大きく2つで、ダイバーシティ施策の重要性を理解し、実現できている会社は、1つ、より働きやすい企業が多いから、2つ、より会社として成長しイノベーションを生み出す可能性が高いからです。

企業のダイバーシティ施策はダイバーシティ&インクルージョン、その頭文字を取ってD&I と言われることが多いです。実際、上に例として挙げた企業もすべてダイバーシティ&インクルージョンという言葉を使っていますね。そして、最近 Google などの外資系企業がD&I に変えて使っているのが、DEI という言葉です。DとI の間にE が入っていますね。ではこのDEI はどういう意味なのでしょうか。なぜD&I から、DEI へと変わっていっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

DEI の定義

DEI とは、Diversity, Equity, Inclusion の頭文字を取った言葉です。それぞれの意味をみていきましょう。

  • Diversity・・多様性。多様な人がいる状態のこと。ダイバーシティ。
  • Inclusion・・議論や意思決定に多様な人の意見を考慮すること。インクルージョン。

ここまでは馴染みが多い人も多いのではないでしょうか。では Equity イクイティはどういう意味なのか、ご存知でしょうか?似ているけれど違う、Equality イクオリティ との違いと一緒にみていきましょう。

EqualityとEquityの違い1

Equity イクイティとEquality イクオリティの違いを説明するのに使われるのがこのような図です。Equality イクオリティは平等、という意味ですが、この図だと上になります。Equalityだと、様々な体格や身体的特徴の方がいるのに、平等という名の下、すべての人に同じ大きさと特徴の自転車を与えていますね。一方で、Equity イクイティでは、その人の体格や身体的特徴に合わせて、異なる自転車を与えています

もう一つ、Equity イクイティの説明でよく使われるのが以下の図です。これは身長の違う3人が、柵越しに野球を見ていますが、Equality イクオリティだと、3人とも同じ高さの台を平等にもらうので、身長が低い人は野球を見ることができません。しかしEquity イクイティだと、それぞれが柵越しに試合を見るに十分な高さの台をもらうので、全員が試合を見ることができますね。

EqualityとEquityの違い2

以上の説明を踏まえて再度DEI の定義を整理すると、以下のようになります。

  • Diversity・・多様性。多様な人がいる状態のこと。ダイバーシティ。
  • Equity・・機会の平等。アクセスの平等。全ての人が平等に成功する機会があること。イクイティ。
  • Inclusion・・議論や意思決定に多様な人の意見を考慮すること。インクルージョン。

このDEI をより分かりやすいく理解していただくために、ダンスパーティに例えてみたいと思います。

Diversity とは、ダンスパーティに(人種や年齢、国籍、バックグラウンドなど)多様な人が出席している状態のことで、Inclusion は、そのダンスパーティにて「踊ろうよ」と誘われること、最後のEquity はダンスパーティの会場が車椅子の人にも出席できる場所にあり、時間帯がみんなが出席できる時間で、みんなが踊れる曲で踊ること

DEI の定義は理解できましたか?これらのDEI の考えが、企業の中の文化づくりや経営、人材発掘に使われているのですね。

D&IからDEIへ変わった理由

今現在、日本の企業だとダイバーシティ、多様性、D&I までなら使われるようになってはいるのですが、DEI を使っている企業はまだ少数です。そんな中、Google などの外資系企業が筆頭してこのDEI を掲げています。ダイバーシティとインクルージョンだけだとカバーができない部分があるため、このイクイティの要素を取り込む必要があるのです。例えば、ある営業チームに多様な人がいて、全員が議論に参加できていても、いざ数字を作る段階で、その人のバックグラウンドを考慮したトレーニングや、情報がないといけませんし、介護や育児をしながら働く人にとってそうでない人と比べると特別な配慮が必要な場合もあるかもしれません。また、会議の中で聴覚に障がいがある人がいる場合、みんな平等な環境や設備を用意するのではなく、その人に特別なリソース(手話通訳の手配や字幕の用意など)が必要になりますよね。

企業にとってのダイバーシティ施策を実施するメリット

ではこのダイバーシティ施策、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?企業のダイバーシティ施策のモチベーションはたくさんあります。例えば、CSRとして、社外へアピールすることができます。実際たくさんの企業が自社のダイバーシティ施策専用のウェブページを作成し、アピールしていますよね。また、人口減少、特に労働人口の減少が顕著な日本にとって、労働力確保となることも確かです。これまでの男性かつ健常者中心だった働き手を女性や障がい者にも広げることは大きなメリットです。

そしてこれが実は一番重要で、最近主流なのが、ダイバーシティはイノベーションや会社の成長に欠かせない、という考えです。企業の中に多様な人材がいて、多様なアイデアがある、ということはその分イノベーションが生まれやすく、経営の数字も高いというのはForbesなどの研究結果としても証明されています。そもそも、消費者・ユーザーのニーズが多様化していることに応えるためには、内部が多様でないと応えられないのはすぐに分かりますよね。

従業員にとってのダイバーシティ施策を実施するメリット

では従業員にとってのメリットはどのようなものでしょうか。メリットはズバリ、より働きやすくなる、ということです。ダイバーシティという考え方がなかった時代の日本企業は、一家の大黒柱である男性が満員電車に乗って通勤し、そこで上司の機嫌を伺いながら年功序列の中で働き、行きたくもない飲み会へ行くことが出世への唯一の道でした。今も残念ながらそんな企業は存在します。しかし、DEI の考えが個人単位に染み付いている企業やチームでは、よりオープンな雰囲気で、一人一人違う「個」を尊重してもらえる風土が根付きます。それぞれの人生の優先順位や理想のキャリアが尊重されるようになるので、より長く、心も健康な状態で働き続けられるでしょう。

DEI の実現に向けての具体策って?

とはいえ、自分の現在所属している企業で、自分が入社した企業や配属されたチームで、必ずしもダイバーシティ施策が実施されているとは限りません。ではDEI の実現に向けて、企業ではどのような取り組みができるでしょうか。一例ですが、取り組み例を紹介します。これらの取り組みを会社に働きかけたり、チームで実施するなどができますね。

社員への研修として

  • 新入社員研修や社員への必須研修にDEIトレーニングを盛り込む(マネジメント層へは異なるカリキュラムで実施できればgood)
  • 特に採用の場などで、アンコンシャスバイアスの排除を積極的に実施する
  • 心理的安全性の確保・・以下で詳しく解説します

日常の業務の中で

  • 全社員ミーティングやチームミーティングなどで積極的にDEIについてディスカッションする時間をとる
  • イベントにおける女性登壇者の目標・・マーケティングが主催するイベント、社内会議のスピーカーの男女比を考えてみましょう

会社の制度として対応できるもの

  • 福利厚生に日本国内では保証されていない同性カップルを含む
  • 介護や育児手当を出す
  • トランスジェンダーの人のためのトイレのジェンダーフリー化や服装のルールの見直し
  • コーポレートルールに差別禁止の文言やルールを加える

アンコンシャス・バイアスに関してはこちらの記事で詳しく説明しましたよね。

心理的安全性については、これも最近いろんな書籍で取り上げられていたり、より良いチームカルチャーづくりの中で取り上げられることが多い言葉です。意味としては、「チームメンバーに非難される不安を感じることなく、安心して自身の意見を伝えることができる状態」のことです。言い換えれば、「安心して自然体の自分自身をさらけ出せる」、「遠慮なく発言できる雰囲気がある」状態とも言えます。

Google のリサーチチームが行った調査によると、効果的なチームの条件として挙げられた上記図の5つの条件のうち、心理的安全性が最も重要な項目でした。考えてみれば当然で、いくらビジョンがしっかりしているチームでも、発言をすれば非難される環境だったり、高圧的で怖い上司がいる中だと、本当の自分の意見を言えないですよね。全ての人が自分の正直な意見や疑問をぶつけられること、が全てのベース、ということです。考えてみて下さい、みなさんが現在所属している団体、チームでは心理的安全性が保たれていますか?心理的安全性が現在の会社やチームであるかどうか、こちらのドキュメントに詳しく判断の基準が記載されていますので是非参考にしてみて下さい。

効果的なチームの5つの条件

心理的安全性は、企業だけではなく、どんなグループや団体にも当てはまります。リーダーだけが決定権や発言権を持った団体や、一人だけが仕切っていてみんなその人の顔色を伺っているグループ、仲間はずれにされないように好きでもないファッションをして話を合わせる学校の仲良しグループ、、全て心理的安全性は保たれていません。結局は自分が辛くなるのが見えていますよね。心理的安全性があるかどうか、是非みなさんのコミュニティ選びの基準に追加してみて下さい。

心理的安全性を保つための具体的な言葉づかい

チームの誰かがミスをした時

「なぜそんなことをしたの?」という個人を攻めるような話し方ではなく、「解決策と予防策を一緒に考えよう」といった、未来にフォーカスをした話をするのがいいですね。

チームの会議で、自分と違う意見の人がいた時

「君の言っていることは違う」と頭ごなしに否定するのではなく、「面白い考えですね、もう少し詳しく聞かせて下さい」という建設的な議論に持っていくのがいいですね。

そして気づいていらっしゃる方もいるかと思いますが、多様な意見の人がいて、心理的安全性が保たれている組織では、ミーティングは白熱し、長引きます。でもそれでいいのです。それが、イノベーションを生む環境なのです。そもそも多様な人がいて、すべての人の立場を考慮し、最善の着地点を見つけるのはとても難しいことなのです。ただし、それができた時の効果はとても大きいものになるでしょう。

これから企業へ就職する、転職するみなさんへ

会社がどれくらいダイバーシティに力を入れているのか、そして実際にどれくらい現場に染み付いているのかは入社前に判断するのは非常に難しいです。しかし入社前にできることは、会社のホームページを確認したり、記載がある場合経営層の多様性を確認したり、人事担当に直接取り組みの具体例を聞いたりなどです。また、OB・OG訪問などで実際のところを聞くのも有効ですし、人事担当に、実際配属される予定の部署の人とカジュアルチャットやランチの時間をもらえないか聞いてみるのもいいですね。そして一番重要なのは、みなさんが自分の働く中での優先順位、自分の理想の働き方を明確にし、それに沿って情報収集をすることです。

今の時代、一度就職して失敗しても転職ができます。周りの人や家族から押し付けられた理想や価値観ではなく、自分にとってベストな選択肢をしていただきたいと思います。

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